小鳥たち

 「どうも家にばかりシコリケッテいるな、たまにゃ外に出るセ、探鳥会ナンカ気晴らしにイイダジ」
 方言丸出しで誘ってくれる友達がいてくれるのも嬉しいものです。ついつい重い腰をあげて、近いところの塩尻峠の小鳥を訪ねるべく出かけました。
 小鳥バスの運行がなかなかの評判で、愛鳥家はもちろんのこと、自然環境にひたりたい人たちで賑わっています。理屈なしに野山の空気を吸い込むひとときを満喫しようというわけです。
 これがいいきっかけとなり、城山あたりや玄向寺近辺、その他に足を向けるようになりました。目の覚めるような新緑のなか、ときどき陽の光りが射しこんで来て、鳥の楽しそうな鳴き声を聞く自分がいっそいとしくなるばかりです。
 聞き方によって「一筆啓上仕り候」や「源平ツツジツツジ」と鳴くホオジロが、キョトンとした顔つきでこちらを向いてくれます。
 ヤマガラというと、縄手通りの夜店に屋台をしつらえ、お賽銭代りの報謝の名目で、篭の入口があいてピョンピョンと渡り、おみくじを引いてくれる妙技を見せてくれたものです。低い山の林に棲んで、巣箱をこしらえてやると、そこにも馴れて、ゆっくりした口調で鳴くのがほんとうにいじらしい。
 小川や沼みたいなところで浴びている鳥を見かけます。あれがアカハラと教えられ、とてもカッコウよく身をくねらせています。浴びたあとはトントンと山の道を跳んで行きます。わき腹はキツネ色。「枯れ草や小枝などでお皿のような巣を作るんだよ」と、友達は言い添えてくれました。
 宮城道雄は随筆『雨の念仏』のなかで、こう書いています。いい天気だからどこかへ行こうということになり、結局近い井之頭公園にきまった。ただ歩いてもつまらないから、とにかく動物園に入る。家の者は、私(宮城道雄)は見えぬから、ただでもよいのだと冗談をいう。ところが入って見ると、ただではなかった。実際に見えないが、池らしいものがあって、水のざわめく音がして、すっかりいい気持になった。
 「遠くで鳩の鳴くのが聞こえてゐた。色々の小鳥が入れてある所に来たら、色々の鳴き声がして面白かったので、暫く立ち止って聴いてゐた。小鳥の声は一番よいと思った」。
 私たちが聞くのとまた違った聞きようだろうが、ちいさいからだつきからのさえずりはとにかく可愛い。
 五月十日から愛鳥週間が始まる。