十二月二十七日


   滝ばかり埋め残したる木曽の雪

              (柳の露)



 旧中山道を上松から須原へ向う途中の、西筑摩郡上松町字小野の断崖には「木曽八景」中の一景である小野の滝がかかつている。ここばかりはさすがの木曽の雪も埋め残している感があるというのである。
 滝の落口の前を中央西線の路線が走り、そしてその下を国道が通つている。滝は流れ落ちてこの二つの橋をくぐつている。滝は流れ落ちてこの二つの橋をくぐつて木曽川に入る。
 細川幽斎の『老の木曽越』に「木曽の小野滝といふは、布引、箕面などにもをさ〱おとりやはる。これ程のものの、此国の歌枕にはいかにもらしけるぞや」とあるが、これはこの街道は古くからあつた道ではなく、天文年間に始めて開かれたもので、それまではこの滝は街道から離れていたため、さほど知る人もなかつたためであると言われる。