十二月二十六日


   人馬とも信濃は雪のもぐらもち

             (同 一一二)



 雪の降る頃である。寒いといつても雪ごもりするほどでない。行つて見たいお祭りが伊那の遠山郷にある。
 下伊那郡南信濃村、上村一帯に十一月末から十二月中旬にかけて行われる遠山霜月祭は昭和二十七年無形文化財に指定された珍しい異様な風態による奇祭。焚き上げた湯をたぎらす「湯立」、天狗やさまざまな面を冠り徹夜して舞い狂う。原始的で単調だが、まことに雄勁素朴。「くがだち」の儀式の名残りで、神の託宣をきくのだとも言う。
 元和元年(一六一五)領主遠山氏一門の虐政に堪えかねた百姓が一揆を起し、一門八人を殺したが、その怨霊が村を悩ませたので、村人が遠山一族を八社の神とあがめて毎年祭りを行うようになつたと伝えられている。