十二月二十四日


   すべらずば芭蕉信濃へゆくつもり

              (同 三一)



 俳聖芭蕉は「いざさらば雪見に転ぶところまで」とほのめかしたので、すべらないなら信濃へ行く胸算用をかぞえていたのだろうとおもわくしたのである。
 家中でクリスマスツリーを飾り、あかあかと燃える蝋燭をかこんで、素直な心を持ち合う食卓のまどいに、静かな雪が降り積りゆくとき、芭蕉ならずともクリスマスイブの敬虔なつつましさを賞でぬひとはないだろう。