十二月十九日


   浦島も慾にかまけて哀れなり

           (眉斧日録七)



 中央西線上松駅は森林鉄道の終点の位置にある。木曽木材の集散地で、官材・民材あわせて年間十万トンをさばいているという。
 木曽は尾張藩の管理下にあつた。住民は材木に恵まれ、それで生活したが、自由にならなかつたのである。「木一本に首一つ」の諺がそれを物語る。
 維新後、尾州の手をはなれて国有林、転じて御料林、戦後再び国有林となつた。西筑摩郡の総面積の六十パーセントが国有林
 上松町は木材の町だ。寝覚の床はバスでほど近い。龍宮から帰つた浦島太郎が老後の身を寄せた伝説がある。