十二月十八日


   小角は二人禿に鬼を連れ

          (柳多留拾遺 三)




 わが国で中世以来苦業を練修する者を行者といつたが、修験道の祖である役小角(えんのおづぬ)は前鬼後鬼と呼ぶ二人の鬼を召し連れていたそうだ。
 この小角は甲斐国から信濃国に入り諏訪から佐久に出たとき、大門峠を初めて越えたのを記念してこの峠を「行者峠」ともいう。
 小県郡長門町を茅野市北山との間にあり、中仙道を長窪宿で分れて蓼科山裾を経、諏訪郡湯川宿から山浦地方へ、そして甲州に通じる街道に当つていて、中仙道の和田峠よりも約八キロ東南のところにあつたから便利な道筋で、大門峠を越える方が近道にもなつた。