十二月五日


   黒姫も化粧の目立つ今朝の雪

         (東宰府天満宮奉額)


 小説家堀辰雄は『晩夏』に、「森の上には黒姫山が大きく立ちはだがつてゐる。その左手に、ややおおきくなつて見えるのは戸隠山だらう。ここは本当に信濃路といふ感じだ」と書いている。
 黒姫山は標高二〇五三メートル、上水内郡信濃町にあり、なだらかな美しい山である。 こんな伝説がある。室町時代、中野城主高森雅盛には黒姫という娘があつたが、近くに住む龍蛇が見染めて風を起し雨を降らしたので、姫は犠牲になつて山にさらわれた。その山を黒姫山というようになつた。