十一月二十五日


   維茂が抓めるあたりは虎の皮

          (柳多留拾遺 五)



 平維茂戸隠山の鬼女紅葉を討とうとして小県郡の別所の北向観世音に祈願をこめ射出した矢が西北方さして飛び上水内郡戸隠村柵に落ちた。西よりの方を鏃八幡、北よりの方を八本八幡として勧請したといわれる。
 そしてこの八幡さまをめぐつた森はみんな箭箆竹で、これは維茂が鬼女紅葉に向つて射た矢が土に立つて根を生じ、繁茂するようになつたといい、昔、領主からみだりに切ることを禁ぜられていた。
 本句、鬼の褌は虎の皮で作られている意。