十一月十七日


   焼けぬ日に見れば浅間も常の山

          (俳諧ケイ 二三)




 浅間山には、先ず噴火状態がどうなのか、それをたしかめてから登る。慎重である。だから遭難者が少い。尤も浅間火山観測所や軽井沢測候所が地震計で観測して、多年の体験から割り出した忠告が大いに物をいうが。
 海抜二五四二メートル、くつきりと頂上まで晴れあがる日は案外すくないようだ。こんなところにも山の神様がある。
 たかが知れた噴煙だと見くびつても、あれで火山から一五〇メートル下の底では、マグマ(溶岩のもとになる岩石のとけた物)が盛り上がり、激しく吹き出す水蒸気の音が聞え硫黄の匂いが強く鼻を突く。不気味だ。