十一月八日


   木曽の秋雪にはなれていそがしき
           (田舎樽)



 きよう八日は立冬。冬にはまだ間があるがそれでも初氷、初霜を見て、さすがに膚冷えを覚える。長い雪の下の生活に備えて大根干し、野沢菜洗いがはじまる頃である。
 これから朝晩の冷えこみはくわわる。山国信州の名にたがわず、いよいよきびしい冬の季節に立ち向つていく。
 炬燵文化がしきりに論じられ、西田哲学の栄えていつた信州の温床がなつかしがられてくる。まだ論じきれぬ頭を冷やそうと外へ出れば、きびしく澄んだ三日月にまた引つかかる。