十一月七日
おしなやと呼んだを見れば男なり
(柳多留 一三)
都会に就職させたあと評判はどうだろうと先生が回つて歩く。長野県人は理屈つぽい。それが求人先のきまつていう言葉だ。
理屈つぽい、よくいえば理想家肌。いいつけられても素直に受けとれず、何とか文句をつけたがる。批判精神が盛んということにもなつて心強いには違いない。独立自尊の気概をほのめかす。
この句、おしなとは信州人を含めて一般に江戸に出た男女の田舎のひとびとを指すが、その頃の信州人の評判はどうであつたろう。
間違
信濃者をおきやす。赤い糸を買ひにやる。とり違へて青い紙を買つて来る。旦那大きに腹を立て、さつそく暇を出す。宿の亭主「其の方は博奕は知らず、酒は呑めず、女郎はきらひ、何でしくぢつた」と尋ねければ「少しの色事さ」(文化五年刊、笑話水の月)