十一月六日


   やさしやな信濃が布子土賊(とくさ)色

            (俳諧ケイ 六)



 長野県はほぼ日本の中の中心にある。自然に恵まれているが生活環境はさほどでもない。農家一戸当りの耕地は思つたより少ないのだ。よい空気をすつて美しい高原をながめているだけで暮すことが出来ないのが現実である。八割が山地、そうした山ばかりだから仕事口を捜しに県外へ出てゆくことになる。信州で上級学校の就学率が高いというが、これは耕地不足から次男、三男をサラリーマンに追いやるハケ口だ。
 この句、われら先輩の質素なスタイルが目に浮かぶ。