十一月二日


   しな介や御鉢の底を鳴らしやるな

           (柳多留 一八)



 農閑期に江戸で出稼ぎして働いた人達だ。冬の間の徒食を嫌い、都会に出て都会の空気に触れ、白い米を大いに食うことが何よりの楽しみであつた。
 「おいおい、しな介さんや、そうお鉢の底を鳴らしてくれるな、お里が知れるよ」とからかわれた。
 鈍重であつたが、真面目なところに好感を持たれたわが先輩諸君である。主に薪割りや飯焚き、使い走りなどを手伝つた。
    信濃
 冬奉公の信濃の人が、足袋屋へ行き「申し足袋を二足」たびや「足をお出し」「アイ」と云ふてつき出せば、たびや「エ、九文ぢやな」「信濃者でござる」(安永二年刊・今歳咄二篇)