十月二十五日

   栗は〱とばかり秋の木曽の山

              (柳多留 一五八)




 落語の「いが栗」というのはこうだ。
 とある辻堂の縁に痩せ衰えたイガ栗頭の恐ろしい顔をした坊主がいたので旅人が道を聞いたが返事をしない。しかたがないので老母と若い娘の家に宿を乞うたところ、この娘が奇病。
 実はかの坊主の悪霊がたたつていたのを奇策で払いのけ、その縁で娘と祝言、いざ新枕となると、ガタガタ、実は鼠の音。その途端に鼠の穴へつめてあつた栗のイガが落ちた。旅人は苦笑い「アツ、まだイガ栗がたたつている」
 この句、木曽の秋を詠んでいるが、貞室の「これは〱とばかりに花の吉野山」のもじり。