十月二十四日

   足抜で村子が拾ふ鬨の栗

         (新編柳多留)




 「君の故郷はどこだ」「木曽だよ」「さぞ大きい栗があるだろうな」「もちろん、これほどある」といつて両手をひろげて見せる。「バカな、そんなのがあるものか」「フフンこれほどある」と、手をだんだん寄せる。「ウソだ」「それならこれでほんとだ」「イヤまだまだ」「そんなに寄せると栗のいがで手をつく」。
 笑い話だが、その栗をぬき足、さし足で拾いにゆく村の子供たち。それほど木曽路の福島関所の取調べもきびしく、いかめしい役人が威儀を正してかしこまつていたのだろう。