十月十六日

   岩茸取り役の行者も知らぬ道

           (柳多留 一)




 小県郡諏訪郡の間にある大門峠。武田信玄甲州から川中島へ出陣するときいつもこの峠を越したといわれ行者越と呼ばれる。
 この峠の東方四キロほど下つたところに仏岩と称する岩石がある。昔、この村の人たちが岩茸を探ろうとさがしているうち、仏岩の断崖絶壁に五輪塔のようなものがあるのに気付き、不思議がつた話が「信濃奇勝録」に書かれている。
 この句、危険を冒して岩茸を採るこんな場所は役の行者だつて知らなかつただろうの意。