十月十五日

   三粒ほど餅へ手品の奇応丸

         (柳多留 一六七)




 奇応丸は子供の病気のときに用いられるがいやがつてなかなか飲まないと、親は餅のなかにそつとしのばせて子供が知らないまに餅と一しよに飲み込ませるのである。これは親ごころだ。
 木曽の福島関所に代々勤めていたひとに高瀬橘翁があり、部下の者に内職として薬を作らせたのが奇応丸の始まりであるという。
 この薬は木曽の山の熊の胆を主薬にしたもの。古くから知られた薬だが江戸にも同名の薬があつた。「母の手で頂いて子に奇応丸」という句もある。
 きようから薬と健康の週間がはじまる。