九月二十四日

   鉞(まさかり)を木曽の山家の聟引出

              (柳多留 七三)




 木曽の山奥にたいそう力自慢のキコリがいる。江戸へ出て宿の主人に「国には私ほどの力持ちはいないよ。木を倒すには斧はいらない。だから私が山へ行くと木が枝をたれる」といつて主人を驚かせる。翌日主人と近くの山へ出かけるが、木の枝はそよともしない。そこで力持ちの男「江戸の木はわしを知らねえからさ……」――江戸時代の笑話。
 この句、さすがは木曽のいなからしく婿への引出物にまさかりを贈つて前途を祝つた。きようは秋分の日、信州は日一日と秋の色が濃くなる。