九月二十一日
野に虫も齢振る頃に駒迎ひ
(新編柳多留 一四)
きようから動物愛護週間が始る。蓼科山の北、千曲川と鹿曲川にかこまれる望月の牧は昔から馬の産地として聞えが高かつた。
貞観七年(八六五)十二月の制令以来、信濃の国の牧(朝廷直属の牧場)の総称であつた望月の名が、やがてこの土地の名にかわつたほど、延喜式信濃十六牧の第一であつた。信濃国八十頭のうち、この望月の牧から毎年二十頭が割当てられた。
信濃には十六牧が置かれたうち、望月・長倉・塩野・新治・猪鹿・萩倉の六牧まで、この望月を中心とする地域にあつたことから見て、この地方が放牧に適していたことがわかる。
私しや信州ヤレ望月の生れ
山家育ちでも実がある
鄙びたうたでしんみりさせる「望月小唄」はこのあたりだ。
飼主自らその馬を引いて京都まで献上にわざわざ出掛けたもので、役人は近くまで出迎えた。それを駒迎えといい、秋の虫の鳴くころだつた。