九月十五日

   月を眺めて御座れよと姨を捨て

            (柳多留 四〇)




 昔、ある男が妻にすすめられて、親代わりに養つていた姨を山に捨てたが、悲しみにたえられず再び連れ帰つた。
 きよう十五日の「としよりの日」にふさわしい姨捨山の伝説である。
   わが心なぐさめかねつさらしなや
     姨捨山に照る月を見て
 「古今集」のこの歌から一編のロマンスを語らせたことになる。棄老伝説の典型。
 そこには貧しさとそして田毎の月に見る段々畑の自然の激しさに対する勤勉の面が素直にあらわれている。