九月十一日

   川中の団扇両將勝負なし

          (ことたま柳)




 篠ノ井駅からバスで十分、八幡原に達する。ここは上杉謙信武田信玄両雄一騎打ちの場所といわれ「三太刀七太刀之跡」という碑がある。虚々実々、両軍相ゆずらず、交戦実に五たび、その最も激戦だつたのがは四回目の永禄四年九月の戦いであつた。今から四百年ほどの昔だ。
 謙信は一気に勝負を決せんとして、信玄にきりつけた。あわやと思われたが、わずかに団扇をあげて受けとめ、原大隅が来て謙信を槍で突こうとして、あやまつて馬を突き、信玄はやつとのがれたという。