九月十日

   川中島はしんけんの勝負なり

           (柳多留 七九)




   昔憶えば千曲の水よ車がかりの音もする
篠ノ井音頭にある。
 武田信玄は啄木(きつつき)戦法で敵を包囲したと思つたら、上杉謙信は車がかりの陣備えで不意に川中島に戦闘体形を整えた。時に永禄四年(一五六一)秋九月十日の夜明けがた。驚いた武田軍、勢いに乗じた上杉軍、ここに有名な川中島合戦が展開する。
 鞭声粛々夜河を渡る、流星光底長蛇を逸すは詩吟でうならせる文句だが、妻女山茶臼山の名も激戦地として忘れられぬ。