九月二日

   どぶりチウぴかり難波の鮒は逃げ

           (新編柳多留一五)




 信州信濃善光寺――この名高いお寺は毎年三〇〇万人の善男善女でにぎわう。だから長野駅の待合室は四季を通じて団体客でいつぱい。
 長野は信州ではいちばん古く開けた町。善光寺如来の門前として、すでに南北朝のころから活気のある町だつた。
 一光三尊阿弥陀如来の伝来には幾多のいざこざがある。欽明天皇のとき、仏像と経巻の採否に議論が集中し、ついにふいごでやかれ難波の池に投じられたこともあつた。
 この句、(どぶり)そして(チウ)はマを置いた擬音演出である。