九月一日

   風鈴も銭がなくてはならぬなり

              (田舎樽)



 夏の風物詩になくてはならぬ風鈴。趣向をこらしてつりしのぶにあしらつた風鈴。ちよいと水をくれてやると、どこからともなく吹く風にチリンチリンと鳴つて、さしもの暑さもひととき忘れる。
  風鈴の下に一文世をのがれ
 一文銭が小さな短冊にむすびつけられ、その動きでならす。流通貨幣からひとりのがれたかつこうだ。
 風鈴に暑さを忘れようとしたのもつかの間きようは二百十日。やがて台風シーズンがやつてくる。
 「田舎樽」は文化年間、松本より刊行の地方句集。