八月二十九日

   丸顔を味噌にして居る軽井沢

           (柳多留 一)




 蜀山人大田南畝は、安永年間(今から約百八十年前)に洒落本「軽井茶話・道中粋語録」を書いた。「軽井」は信州の軽井沢である。この当て字は軽い茶ばなしを利かせ、粋語録(すごろく)は雙六、粋な語録の意味だ。江戸時代の軽井沢・沓掛・追分は浅間三宿で旅人の往来がにぎやか。化粧した女がなまめかしい姿でその艷を競い合つた。この書物は客との会話で地方色豊かな味を出している。句は自分の丸顔のよさを大いに自慢にして得意がる女である。