八月十六日

   暑い事諏訪へ参るに大廻り

          (柳多留 二三)




 カブキの本朝二十四孝の立役、八重垣姫は諏訪湖祭に人気を集める。諏訪法性のかぶとにまつわる武田勝頼と、上杉の息女八重垣との奇しき物語。舞台は下諏訪、明神さま、桔梗ケ原などがあり、そのうちでも「十種香の場」はしばしば上演され評判高く、また狐火の艶麗は印象的。
 諏訪湖は毎年その結氷のとき御神渡という現象があつて昔から知られ、いまは科学的に解明された。夏になると氷の道を通れずに大廻りしなければならなかつた昔と違い、いまは遊覧舟が威勢よく走る。
 諏訪地方には特産かりんがある。ここのかりんの香気は強くただ一個一室に置いても部屋中に香がただよう。これを砂糖漬にする。アクが強い果実だから、うすくおろしてまず塩につける。半日ぐらいするとアクがしみ出るから、水に浸して何度も水替えをして塩気をとるとアクも一緒に抜ける。それを改めて砂糖漬にする。