七月二十六日

   筧の水も耳につく木曽の旅

          (柳多留一三六)




 川の流れの音は尚更のこと筧の水も旅先では耳につく。木曽路なればこそあざやかだ。
 木曽谷の夏祭のうちでも奇祭として知られているのは西筑摩郡福島町水無神社の豪快な“みこしまくり”である。
 その昔、宗助、幸助という二人が飛騨一の宮水無神社の御神体をみこしに入れて戦火を逃がれ、木曽へ移そうと追手に追われて、みこしをころがしながら辿りついたといい伝えられている。
 「宗助」「幸助」という独特のかけ声のなかで元気な若い衆が目抜き通りを横まくり縦まくりして重さ三百六十キロ、新しく造つたばかりのみこしをころがしながら、メチヤクチヤにしてしまうのである。