七月十六日

   名所にもならで信濃の夏の雪

             (田舎樽)




 信濃の国の天井、日本アルプスには名所にもならぬ雪が夏になつても残つているよ、といつた意味。
 確かに昔は名所にもならない雪を土地の人たちだけがながめあげていたのだろう。ところがいまはどうだろう。信濃の山という山は登山者、ハイカーのあこがれの的。夏はなおさらで頂をめざす若者がアリの列のように続き交通整理のお巡りさんまでご出張という。そんなところからみるとこの句、今昔の隔りを如実に物語つているようだ。
 ちなみにこの句、百五十年前松本で作つている。