七月十二日

   兼平の手本は滅多習はれず

           (万句合明和元・義五)




 ふたり連れ立つて馬場へゆき「馬に乗つて見ようではないか」「コリャおもしろかろうが、一度も乗つた事がない」「ナニ静かに乗つて見やれ」と無理に乗せたところ、馬は一散に駆け出した。「アレ〱どうもならぬ」といううちに、馬場のなかほどで、ころりといううちに、「馬場のなかほどで、ころりとこけおちる「アヽこれでよい」
 木曽四天王の随一として勇名をうたわれた今井兼平は、戦い敗れた義仲と行を共にし太刀を口にくわえ馬上から真逆様に落ち貫いて悲壮な最期を遂げた。それと比べればこの江戸小咄は何とペーソスがあるではないか。