七月十日

   聞き慣れぬ琵琶に驚く関の駒

           (新編柳多留一三)




 どこにも珍しい行事はあるものだが、榊祭というのが北佐久郡望月町本牧の望月の里にある。
 この地に城のあつた頃、陳情に農民たちが松明をかざして城下に押し寄せた。土地の庄屋が調停してことなきを得たが、これを伝えて夏の夜、若人たちが松明を振りたてて鹿曲川に棄て、ミコシを担いで興ずる祭事だ。
 また、この望月の里はむかし望月の牧といつて、名高い馬の産地で京都まで献上したものである。この句、近江国逢坂関に迎えられた駒が琵琶師のビワに驚くの態。