六月十三日

   権兵衛が目を覚めぬと〆たこと

            (柳多留 八九)




 小諸城は寿氷の昔木曽義仲に属した小室太郎が住んだと伝えられる。この城はまた大盗石川五右衛門を捕えた仙石権兵衛が城主をつとめたとの記録もある。
 権兵衛は美濃国の生れ。秀吉につかえて数々の武勲を立てて、のち讃岐一国十二万石を与えられている。しかし、九州征伐の時、軍命にそむいて秀吉の怒りを買い一時領地を没収され、再び小田原城攻略に功をたて小諸城に返り咲いた。この句、秀吉を刺そうとした石川五右衛門を宿直の権兵衛がかけつけて捕え、名声とみにあがつた。