六月十二日


   づくなしに重石をかける雨が降る

              (田舎樽)




 暦のうえでこのあたりから入梅
 この句の雨は梅雨とはきまつてはいないが、あの鬱陶しい、じめじめした梅雨にふさわしい趣きがある。ずくなしは信州一帯に用いられる方言のひとつ。
 仕事に励みや根気のあることを、ずくがあるというが、これはその反対で、しとしとと降り出した雨に一層重石をかけたように尻をどつしりおちつけてしまつた。
 「田舎樽」の序文は十辺舎一九だが、「柳多留」五十八篇も同じく一九。