六月十日

   人丸を枕時計にして寝入り

            (田舎樽)




 きようは時の記念日
 朝早く起きようと思うとき、柿本人麿の詠と伝えられている。
   ほのぼのと明石の浦の朝霧に
      島がくれ行く船をしぞ思ふ
の上の句を三度前夜就寝のとき唱えて祈念すると、翌朝望みの時刻に目が覚めるという俗信があつた。まことに天下泰平、うららかな時代、古風な目覚まし時計である。
 この句、松本で江戸時代に刊行された「田舎樽」に見える。