六月九日


   金の気であけて浦島腰が抜け

           (柳多留 五二)




 英人牧師ウエストンは明治二十四年に槍ヶ岳に登つたのがきつかけで、北アルプスを紹介した開発者である。上高地にリリーフが飾られ、その前で登山シーズンにさきがけてウエストン祭が行われる。
 ウエストンの登山歴はひろく、中部山岳の多くの高山に登り、渓谷を探つている。あの木曽の寝覚の床の印象として、日本人の最も驚嘆すべきものと評価しているが、奇勝名勝といつたレツテルを好まないようであつた。名のない自然への目覚め、盡きない自然への憧れ、それがあつたからであろうか。
 寝覚の床には浦島太郎の伝説で有名。
 木曽川が駒ケ岳の前山の風越山の山裾をえぐつて造つた渕。ほぼ垂直、段階がある。