五月三十日

   松の本神も二枝跡をたれ

          (柳多留 五六)




 柳多留というのは江戸から出た川柳句集である。明和二年(一七六五)に初編が刊行され、延々として天保十一年(一八四〇)の百六十七編に至るまで続いた。
 俳句と同じように十七字だが、題材が広くかつ深く、人情機微、社会諷刺で民衆詩としていまも愛されている。
 この句は江戸作家が松本の天白神社へ奉納されたものだが、二枝とは誉田別命倉稲魂命を祭つてあることを示している。
 柳多留五十六篇は文化八年(一八一一)の刊行。