五月二十一日

   鎌首を見て刈萱は山へ逃げ

          (一安追善会)




 落語に「絞紺屋」がある。本妻と妾と同居させ、至つて仲よく、妾は鳴海しぼりを造ることが上手で、本妻もこれに協力してくれるので、亭主は誠に裕福である。「それはよくないことだ。加藤左衛門尉重氏という殿様は奥様と側室があつて見かけは親しげだが、寝ているとき両女の髪の毛が蛇になつていたのを見て出家した。注意しろ」これを聞いて気がかりになり、障子に映つた二人の影を見違えてビツクリ出掛けようとする。「どこへ行くのか」「ウン紺屋へ行く」重氏が高野山に登つたことにかけた。刈萱上人として長野市の往生寺に庵を結び、往生を遂げたのはこのひと。