五月十七日

   値の知れぬ山を小角踏んで見る

            (しげり柳)



 もとは湿原にすぎなかつたが、いまは人造湖として白樺湖という名前があり、長野県でも一流の観光地。茅野市北山、茅野駅からバスで一時間。白樺湖の西北の小高くなつたところを大門街道が茅野から北佐久へ延びているが、そこに大門峠(一四四二米)がある。
 かつて武田信玄はこの大門峠までをおのが洗浄地域として行動範囲に置いていたというから、なかなか重要な街道だつたに違いあるまい。
 この大門峠は行者越とも呼ばれる。今から千二百数十年の昔、文武天皇の頃のこと、修験道の開祖役小角(えんのおづぬ)が初めてここを越したというのである。
 この句のように、前人未到の山々に多くの道を開いたことだろう。