五月十五日


   ひまを盗んで自来也を見に這入り

            (柳多留一五一)




 「児雷也豪傑物語」などを一連とする児雷也の芝居は、神出鬼没、忍びの者の活動を描いたもので大当りをとり名高くなつた。
 もともと中国小説の翻案で、勧善懲悪の歯切れのよさが愛読され、また観劇された。
 架空の人物がいつしか実在のようになつてその出生地は埴科郡坂城町南条の鼠宿だと作者が取り沙汰するに及んで、同じく鼠宿を出身地とする名妓薄雲と共に児雷也の名も脚光を浴びるに至つたのである。
 本句は僅かの時間をぬすんで芝居を見に入つたことを言い、「盗む」の縁語から成る。