石燈籠いつのか知れぬ油皿
(桜の実)
古い石燈なら油皿は昔のままでいつ使つたのだろうと思われるのもある。南佐久郡臼田町の好色燈籠はいい例だ。
「ここにドンフアンン一人ありぬ」を地で行つて遍歴中、このあたりに来たところ稀れに見る美人に逢い大いに心を動かしたが、どこかへ曳かれてゆく姿があまりに痛々しく様子を聞くと、配流になつた父と一緒にいるうち百姓にかどわかされ貢米質として連れて行かれるところだつた。さすがの好色師もあわれに思い助けてやり、飜然心を改め紀念として「永享二年好色師奥州住秀鶴」と刻みこの燈籠を立てたという。