五月十三日


   弁慶はせめて小町はからむたい

             (柳多留 一三)




 小野小町は全くなくて弁慶はそれでもたつた一度はあつたのだ。弁慶安んじて可なりとかずをこなした人はよそごとに言いたがる。
 九郎判官義経が奥州へ落ちのびる頃のこと弁慶も一しよに従つて行つたが、信濃路へ入つたところ、道の真中に大きな石が転がつて邪魔になつた。人並すぐれて力の強い弁慶は腰にさしていた太刀を抜いたかと思うと、大石を真向うから切りつけた。と見る間に、真二つに割れて道行くことが出来た。それで弁慶の切石という。こういう伝説は各地にあろうが、駒ケ根市、下伊那郡鼎町にその地名を持つた由来がある。