五月三日


   薄雲で少しは晴れた御胸なり

            (柳多留 四一)




 萬治高尾とか仙台高尾とか呼ばれた名妓高尾は伊達候をふつたことで名がある。その妹妓薄雲はふりそうな名でふらず、伊達候の意に添つた。そこで仙台薄雲が生まれる。
 薄雲は埴科郡坂城町南条の鼠宿という部落の一農家に呱々の声をあげたが幼いときから美貌をうたわれ、それが仇で人さらいにかどかわされる始末。挙句の果ては江戸新吉原の三浦屋に売られて嬌名を高めるに至つた。
 『江都著聞集』にある三毛猫を愛したという薄雲は、この仙台薄雲と別人であると言われている。