四月二十九日


   船頭の綱わたりする丹波


          (柳多留 七三)




 木曽路に源を発する奈良井川梓川を合流した犀川が、もう少し下流すると千曲川に合わさるあたり、更級郡更北村に丹波島というところがある。
 十辺舎一九の『続膝栗毛』九編には「それより、丹波島を打すぎ、犀川のわたしにいたる。こゝのわたし船は、両方の川岸より綱を引はり、それをつたひてわたるふねなり」
 丹波島の渡である。この渡船場は川巾が十八丁もあり、流れが早いために手繰り渡しで旅人に珍しがられた。丹波島の渡を過ぎると遥かに善光寺の御堂の屋根が見えた。