四月二十日


   山ざくら誰に見しやうとのこるらん


                (田舎樽)




 「田舎樽」の序文を書いた十辺舎一九著わす「続膝栗毛八篇」の松本あたりの挿絵の賛は高美屋甚左衛門である。その狂歌のなかに「城山の」とある。いまは城山公園となつていて観桜蔵に散策に好適地。安曇平を隔てて遙か日本アルプスの眺めは雄大だ。その公園に
    鉦ならし信濃の国をゆきゆかば
         ありしながらの母見るらむか
の窪田空穂の歌碑がある。松本市和田出身。また近くに吉江孤雁の詩碑が建つている。
    双の触手は 大空を探つて
    全身で己の行跡を
    書きとめる蝸牛
 孤雁はフランス文学者。塩尻市出身。
 二人は松本中学(いまの松本深志高校)時代から親友、早稲田大学も同門。