四月十二日


   諏訪の橋板天龍へ春流れ


           (新編柳多留一四)




  天龍下ればしぶきに濡れる
         持たせやりたや檜笠
 諏訪湖に端を発する天龍川は、木曽山脈赤石山脈との間を流れて、伊那盆地を過ぎるといわゆる天下に知られた天龍峡となる。このあたり両岸相せまつて、急流しぶきを飛ばし、豪快なる天龍舟下りにふと伊那節が口ずさまれてくる。飯田線市田港から二十キロ、天龍峡まで鬱蒼たる樹林美をぬつて、奇岩がそそりたつ天龍川を下つて舟は見るからに豪快だ。