四月九日

   のどかさや諏訪の親類遠くなり


             (柳多留 五六)



 岡谷王国を誇つた製糸業が没落してから諏訪湖周辺の産業は一変した。光学機械、オルゴール、時計、写真機、医療器具などの精密工業が目ざましく発展している。日本のスイスといわれ、土地の澄んだ空気と、人びとの秀れた技術を合せ持つたこの地方は進展の一筋道を約束されている。
 氷の張りつめた諏訪湖を渡つて早く行けたのに、春になると親類へも、てくてく陸を歩いてゆかねばならないという句。