四月六日


   蓋明けた後釣竿を杖につき

         (柳多留一六一)




 木曽は山のなかである。まさに木材王国。木曽五木といえば檜を初めとし、椹、明檜、槇、ねずこで、これが多量に伐り出され江戸時代初期の城郭建築ブームに大活躍をした。木曽川を中乗りさんが筏下しでたくみにあやつつた。
 木曽の伐木は尾州藩の徳川侯が一手に掌握していた。そのため材木奉行が駐在し、木曽の人たちは材木に恵まれていながら自由にはならなかつた。
 しかし一面、尾州藩の林制は木曽美林を残したことになり、長い間に木材工業を発達させ、今日の名古屋の繁栄をもたらしたことになる。上松町は木材の集散地、駅から南へ一キロ半、寝覚の床がある。浦島太郎が釣りをたのしんだ伝説で有名。それに因んで「寿命そば」の看板のそばやが傍にある。