三月二十九日


   煙り立つ山が日本の香炉峰


            (柳多留 八九)




 香爐峰は白楽天の詩で名高いが、これを知つていて清少納言が大いに文学的素養のほどをひらめかした逸話は馴染み深い。
 形はまるく、雲や霧がまるで煙りのようにたちあがる香爐峰の日本版は浅間山
 長野県と群馬県に跨る活火山である。第一次の火口壁は黒斑山と牙山とを残し、第二次の火口壁は西部が非常に隆起して前掛山をなしている。いまの火口は第三次のもの。直径三五〇メートル、「お釜」と呼んでいる。盛んに噴煙をあげつつある若々しい山だ。