三月十九日


   大そうな坂森のある和田峠


            (柳多留 一四〇)




 今は国鉄バスが通つているが、昔の中仙道で、諏訪郡下諏訪町小県郡和田村を結ぶところに和田峠がある。標高一、五三一メートル。北の和田、南の下諏訪のどちらからも十二キロの登り道。
 頂上からは東に浅間山の噴煙、西に御岳駒ケ岳の連山を望み、はるかに天龍川を見おろす絶景の地。峠の路はけわしくないが、曲りくねつて旅人を苦しめた。峠を隔てて東餅屋西餅屋の茶店があつた。峰附近からは石器時代の生活資源だつた黒曜石が産出される。
 この句、坂森と酒盛をしやれて「和田の酒盛」を利かせている。