三月十七日

   駒ケ岳鞍摺るほどに春の雪


             (柳多留 一三四)




 駒ケ岳は木曽駒とも呼ばれ、中央アルプスの主峰である。
 伊那方面なら飯田線の駅のいくつかに木曽駒登山口の宣伝が利いている。木曽方面からは福島口、上松口などがある。この山上の濃ヶ池にまつわる伝説はこうだ。
 山麓に美しい娘がいた。山の男らを悩ませた。金的を当てて喜んだ男は婚礼の翌朝、真つ青になつて逃げ帰つた。寝姿が角の生えた鬼になるのだ。濃ヶ池の主がこの娘を慕い、そのようにさせた。娘ははかなんで池に身を果てたという。