三月十一日

   正の字の並ぶ武の神稲の神


           (柳多留 五六)




 江戸の作家が文化八年(一八一一)に松本の天白神社に奉納した句。正八幡と正一位稲荷大明神をまつることを意味する。
 ところで、この土地には古い伝統の「松本手まり」がある。城下町松本に長い歴史を持つ手工芸品。
 年占いの神事の競技に用いられたが、のち子供が手まりにしたり、お手玉のようにして遊んだ。昔、しんを山蚕にしてコロコロ音が出たが、いまは小さな鈴を入れ綿でくるみ、幾何学的模様に独特の手法をとりいれて色糸でかがつてゆく。量産できないのがかえつて愛好者の人気を集めているようだ。
 毬をつく娘は膝で歩くなり(柳多留一八)